妊娠糖尿病GESTATIONAL DIABETES
妊娠糖尿病とは
妊娠糖尿病は妊娠した方の8人に1人の割合で発症し、流産や早産のリスクのほか、胎児にも合併症のリスクが増加するので注意が必要です。
妊娠糖尿病の原因
膵臓から分泌されるインスリンというホルモンには、血糖値の上昇を抑える働きがあります。
ところが妊娠すると胎盤の影響でインスリンの効きが悪くなったり、インスリンが分解されたりして血糖値のコントロールが難しくなります。そして血糖値が一定の基準を超えたとき、妊娠糖尿病と診断されます。
妊娠前から肥満である、もしくはご家族に糖尿病の方がいる場合は、妊娠糖尿病を発症しやすい傾向があります。
妊娠糖尿病の症状
糖尿病と同様に、妊娠糖尿病も初期には自覚症状がほとんどありません。
妊娠糖尿病の合併症は妊婦だけでなく胎児にも影響が及ぶため注意が必要です。
お母さんへの合併症
お母さんへの合併症として、流産・早産、羊水過多、妊娠高血圧症候群、巨大児による難産などがあります。
赤ちゃんへの合併症
お腹の赤ちゃんに起きる合併症には、先天奇形、巨大児、低カルシウム血症、高ビリルビン血症、子宮内胎児死亡、新生児低血糖症、呼吸窮迫症候群などがあります。
妊娠糖尿病の検査
以下の数値が見られる場合、妊娠糖尿病が疑われるため「75g経口ブドウ糖負荷試験」を行います。空腹時に75gのブドウ糖を含んだ検査用の飲み物を飲んだ後、1時間後と2時間後に血糖値を測定する検査です。
●妊娠初期に普段通りに食事をした状態の血糖値(随時血糖値)が95-100mg/dL以上
●妊娠中期の随時血糖値が100mg/dL以上か、50gグルコースチャレンジテストの値が140mg/dL以上
さらに75g経口ブドウ糖負荷試験の結果、次の3つのうち1つでも該当する場合には妊娠糖尿病と診断されます。
①負荷前(空腹時)血糖値が92mg/dL以上
②負荷後1時間血糖値が180mg/dL以上
③負荷後2時間血糖値が153mg/dL以上
妊娠糖尿病の治療
妊娠中は運動療法をあまり行えないため、食事療法と薬物療法をメインに治療を行います。
薬物療法は胎児への影響を考えて飲み薬は使用せず、原則インスリンを使用して血糖値をコントロールします。
出産後の注意点
妊娠糖尿病は多くの場合、出産後に血糖値が正常な値に戻ります。
ところが、妊娠糖尿病を発症した方のうち約20%の方が出産後5年以内に糖尿病へ移行したという報告があるので注意が必要です。
まずは産後1~3ヶ月で75g経口ブドウ糖負荷試験を行い、血糖の状態を確認することが推奨されています。その後も定期的な検査に加え、適切な食事と運動を心がけて糖尿病へ移行しないように血糖コントロールに努めましょう。